WAX214レビュー

NETGEARから2021年12月に販売開始となったWi-Fi6(802.11ax)対応アクセスポイントWAX214を購入して使い始めたので、レビューします。

Wi-Fi6(802.11ax)に対応した端末を使っているのにアクセスポイントがWi-Fi5(802.11ac)止まりになっている状況を改善すべく、WAX214を購入しました。

当初はWAX610を購入する予定だったのですが、半導体不足の影響なのか入手が困難ということもあり、2021年12月に販売開始となったWAX214の方を購入しました。Wi-Fi6対応のアクセスポイントも、家庭用Wi-Fiルーターであれば、NECのAtermやBuffaloなどのWi-Fi6対応製品が在庫豊富で容易に入手可能ですけれども、毛流麦花はアクセスポイントの認証方法として、WPA2/WPA3 Personalは使わず、WPA2/WPA3 Enterpriseモードしか使っていないため、家庭用Wi-Fiルーターは最初から選択肢になく、商用アクセスポイントであるWAX214を購入しました。

1. 価格
2. 外観
3. 設定画面
4. 認証方法
5. 対応している周波数帯
6. 実効速度と安定性
7. 最後に
8. 番外編

1. 価格

販売元がアマゾンの日本向け正規品を日本のアマゾンで購入し、おおよそ1万5千円でした。日本国内で購入できるWi-Fi6対応商用アクセスポイントとしては、かなり廉価です。家庭用Wi-Fiルーターとさほど変わらない値段で買えるのはありがたいですね。

と言いながら、WAX214はアメリカのアマゾンでは80ドルほどで販売されており、日本での価格は米国での価格のおおよそ2倍となります。日本向け製品では、日本の技適を取得する等の追加コストが発生しており、iPhoneみたいに大量に売れる製品でもないので、米国価格のおおよそ2倍という価格設定は妥当かと思われます。米国価格の2倍であっても、YAMAHA等の商用アクセスポイントと比べればまだまだ廉価で、コスパも圧倒的に良いです。

2. 外観

動作時の外観はこんな感じです。PoE(802.3af)で動作させているところです。

Wi-Fi6対応の商用アクセスポイントでは、最低でもPoE+(802.3at)必須のものが多いですが、WAX214はPoE(802.3af)でフルスペック動作可能です。ちなみに、当初購入予定だったWAX610ではPoE(802.3af)だとパフォーマンスダウンしての動作となり、PoE+(802.3at)でフルスペックでの動作が可能になり、WAX630だと、フルスペック動作にはPoE++(802.3bt)が必須になります。

ちなみに背面は、そこそこ熱くなりますので、放熱を意識して設置した方がよいでしょう。参考までに、非接触式温度計でPoEで動作中のWAX214背面の表面温度を測定したところ、おおよそ30〜40℃でした。

確固たる根拠があるわけでないので話半分で聞いていただきたいのですが、動作時のLEDの色が、既存のNETGEAR社製アクセスポイントとまったく異なるので気になって調べたところ、WAX214はEnGenius社製ECW220のOEMである可能性がありそうです。本体の寸法・重量がWAX214とECW220では、ほとんど同じです。EnGeniusは台湾のメーカーで、WAX214の製造国表記もMade in Taiwan です。本体表面のデザインだけはECW220とかなり違って見えるものの動作時のLEDの色は同じで、本体背面はECW220と瓜二つです。「OEM製品は嫌だ、本当のNETGEAR製品がいい」という人はWAX214ではなくWAX610を購入しましょう。

3. 設定画面

既存のNETGEAR社製アクセスポイントとはまったく異なる項目体系の設定画面になっており、「WAX214はEnGenius社製ECW220のOEM製品である可能性あり」説を後押しします。設定画面の言語設定に日本語はありませんが、英語の設定画面で全然問題ないでしょう。なお、アマゾンで購入した日本向け正規品の製品自体は日本の技適を取得しており、WAX214背面に技適のマークもあります。

WAX214はInsightでのクラウド管理には未対応ですが、個人で使うのであればブラウザを使ったローカル管理だけで十分なので、問題ないでしょう。クラウド管理に未対応な分、Insight1年無料等のためのコストを上乗せする必要がなくなり、結果的に販売価格も廉価に抑えられているはずです。

接続している端末毎の送受信データ量を表示できたり、

SSID毎のトラフィックをグラフで表示できたりします。

Wi-Fiの設定画面です。毛流麦花は5GHz帯でのチャンネルボンディングの帯域幅を40MHzに設定していますが、もちろん80MHzに設定することも可能です。

4. 認証方法

WPA2 Personal(WPA2-PSK)、WPA3 Personal(WPA3-SAE)には当然対応しており、WPA2 Enterprise、WPA3 Enterpriseにも対応しており、WAP3 Enterpriseについては、192bit mode(SuiteB 192bit)にも対応しています。

毛流麦花は、WPA2/WPA3 Personalは使わずに、WPA2/WPA3 Enterpriseモードしか使っていないため、WPA3 Enterprise(192bit)モードにも対応しているのは、ありがたいです。brute forceアタックに対して無防備だったWPA2 Personal(WPA2-PSK)に対して、WPA3 Personal(WPA3-SAE)はbrute forcceアタック時にログインを制限するなどの対策が取られるようになったというものの、抜本的な対策とは言えず、高セキュリティWi-Fiを志向するなら、WPA2/WPA3 EnterpriseモードでEAP-TLS認証を使うしかないと考えています。

WPA3-Personalの設定画面です。

WPA3 Enterpriseの設定画面です。SuiteB 192bit(192bit mode)も有効化できます。

5. 対応している周波数帯

Wi-Fiの周波数帯として、2.4GHz帯と5GHz帯に対応していますが、このうち5GHz帯については、W52のみの対応である点に注意が必要です。W53/W56の周波数帯には対応していません。総務省のサイトで確認してもW52の周波数でしか技適を取得していないため、今後追加で対応する可能性は低いと考えられます。

5GHz帯の技適の内容です。

念のため、2.4GHz帯の技適の内容も載せておきます。

WAX214の英語版のマニュアルのスペック欄にはW53/W56の周波数帯が記載されているので、ハードウェア自体はW53/W56の周波数帯に対応しているものの、日本向けWAX214は(おそらくコストダウンのため)W52の周波数帯でしか技適を取得しておらず、W53/W56の周波数帯は塞がれている、というところなのではと思われます。

W53/W56の周波数帯は、DFS回避機能(※)がなければDFSによる通信断が多発して使い物にならないので、W52の周波数帯のみの対応であることについては特に気になりません。一時期W53/W56の周波数帯を使おうと試したものの、DFSによる通信断はレーダー波がなくてもDFS誤作動(誤検知)でも起こることが多いらしく、DFSによる通信断が多発して、結局W52の周波数帯しか使わなくなりました。

Wi-Fi5(802.11ac)までは、同じ周波数帯に多数の端末が接続して同時に通信しようとすると、他の端末が通信している間は通信を待つ必要があることもありパケ詰まりに似た現象が発生していたものの、Wi-Fi6(802.11ax)ではLTEでも使われているOFDMA(直交周波数分割多元接続)やBSSカラーリングの導入で、そうした現象の緩和が期待できるので、WAX214みたいな廉価製品で割り切ってW52のみの対応とするのは妥当な判断と思います。

※: DFS回避機能、商用アクセスポイントだとYAMAHA, Buffalo, elecom, Cisco等が対応しており、家庭用Wi-FiルーターでもNECのAtermの一部製品がDFS即時切替機能で対応していますが、NETGEARでも対応して欲しいですね。

6. 実効速度と安定性

実効速度ですが、5GHz帯で帯域幅40MHzに設定した上で、WPA2 EnterpriseモードのSSIDにiPhoneSE(第2世代)から接続してスピードテストをすると、最大で300Mbps程度の速度が出ました。Wi-Fiの実効速度は、アクセスポイントの設置場所周辺の電波環境、接続している端末の台数、MU-MIMO対応可否等の端末のスペックにもよるので、あくまでも参考値です。

アクセスポイントの安定性については、通信が不安定になるといった症状は出ておらず、パソコン、スマホ、タブレットのいずれも問題なく安定して使えています。冒頭で、WAX214はEnGenius社製ECW220のOEM製品である可能性がある旨書きましたけれども、OEM製品であるが故に不安定・低品質、といった感じは全然ありません。

WAX214は日本のアマゾンでは2021年12月27日に販売開始になりましたが、アメリカのアマゾンでは1年前の2020年12月9日に販売開始になっています。アメリカ市場に投入されて既に1年以上が経過しているため、致命的なバグについては既に対処済みであることが期待できるのではと考えられます。

7. 最後に

最後に、WAX214の良い点と残念な点をまとめましょう。

【良い点】
(1)廉価であること。家庭用Wi-Fiルーターとさほど変わらない価格で買えます。

(2)商用アクセスポイントであること。家庭用Wi-Fiルーターとは違って、WPA2/WPA3 Personalに加えてWPA2/WPA3 Enterpriseモードも使え、高セキュリティのWPA3 Enterpriseモード(192bit mode)も使えます。

(3)PoE(802.3af)で動作すること。Wi-Fi6対応の商用アクセスポイントは最低でもPoE+(802.3at)必須のものが多いなか、WAX214はPoE(802.3af)でフルスペック動作可能なので、PoE(802.3af)給電対応スイッチングハブがあればそのまま流用できて、わざわざPoE+(802.3at)給電対応のスイッチングハブに買い換える必要がないのはありがたいです。

【残念な点】
(1)5GHz帯はW52のみの対応で、W53/W56は未対応であること。

8. 番外編

日本国内において個人で買える商用アクセスポイントは意外と選択肢が少ないです。以下、毛流麦花の私見(偏見)です。

NETGEAR(ネットギア): 製品デザイン、コスパ、サポート、いずれも及第点が付けられる。日本国内で個人が商用アクセスポイントを購入する場合のほとんど唯一とも言ってよい選択肢。商用製品を個人で購入しても、きちんとユーザー登録できてサポート・保証も受けられ、さらに最新のファームウェアも入手できるメーカーで、実績のあるメーカーとなると、日本国内ではNETGEARとYAMAHAだけだと思う。

YAMAHA(ヤマハ): Allied Telesis同様に日本のメーカーで、本来であればもっと頑張って欲しいメーカーで、製品デザインは優秀で、サポートは問題ないと思うものの、WLXシリーズは値段が高すぎて、かつコスパも悪くて買えない。

Allied Telesis(アライドテレシス): 日本のメーカーなので頑張って欲しいものの、無骨でゴチャゴチャした感じのする製品デザインが残念。Buffaloもそうだが、もっと魅せるデザイン、デザインだけで買わせてしまうようなデザインにできないものか。Buffalo同様、主要な販売先が日本国内の法人・教育機関等ということで、製品デザインを改善しようというモチベーションがまったく出てきていないのではとも思う。個人で購入すると、サポート・保証に難がある可能性大。

HP ARUBA: 個人で購入する場合、入手性・サポート・保証に難がありそう。

Buffalo(バッファロ): Buffaloなので入手性はよいものの、商用製品を個人で購入するとサポート・保証に難があるらしく、個人での購入は避けた方が無難そう。さらにゴチャゴチャした感じのする製品デザインも残念。

Cisco(シスコ): Merakiシリーズは細かい設定ができず、お仕着せ感が強いので、論外。Ciscoブランドは圧倒的であるものの、SOHO用途だとNetGearの方が無難。Catalyst/Aironetは個人での購入自体が困難。

elecom(エレコム): 商用アクセスポイントを個人で購入した場合のサポート・保証については不明。法人向けについては無償の延長保証があるようだが、果たして個人で購入した場合にも適用されるのか否かが不明。問い合わせしようにも、問い合わせ先がナビダイヤル番号だけになっており、お問い合わせお断り感ありありで、問い合わせしようという気が失せる。市外局番から始まる通常の電話番号も併記しておけばいいのにと思うと残念。BUffalo同様、商用製品の個人での購入は避けた方が無難そう。

LINKSYS: 日本国内では家庭用製品しか販売していないが、米国では商用アクセスポイントも販売しており、日本国内でも販売するようになってくれたらいいなと思う。

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