日本のiPhoneからシャッター音が消える日を目指して

iPhone7/iPhone7 PlusおよびiOS10のリリースに伴い、日本版iPhoneのシャッター音が
マナーモードでも消音できない問題がクローズアップされているので、日本版iPhoneからシャッター音が消える日を目指してAppleを動かすにはどうすべきかを考えてみた。

日本で販売されているiPhoneは、たとえマナーモードに設定していても、標準でインストールされているカメラアプリでの撮影時、およびスクリーンショット撮影時には、シャッター音が必ず鳴る仕様になっている。これは、盗撮などの迷惑行為抑止のためである。カメラアプリのみならず、スクリーンショット撮影時にも必ず音が鳴るのは、カメラアプリの撮影画面を表示した状態でスクリーンショットを撮影する抜け道を塞ぐためとされている。

いっぽう、日本国外(一部の国を除く)で販売されているiPhoneは、マナーモードに設定すれば、カメラアプリでの撮影時、スクリーンショット撮影時のいずれであってもシャッター音が鳴らなくなる。というかマナーモードでシャッター音が鳴らないのが世界的には標準であって、日本版iPhoneのようにマナーモードのON/OFF如何に関わらず必ずシャッター音が鳴るという仕様の方がむしろ例外的で、珍しいのである。

このシャッター音、本来は不要なものである。というか、単なる騒音でしかない。フィルムカメラの時代、フォーカルプレーンシャッターやワインダー(モータードライブ)を搭載した一眼レフのシャッター音が機構上大きかったのに対し、レンズシャッターのコンパクトカメラなどのシャッター音は対照的に小さかったものの、だからといってレンズシャッター機の音の小ささが問題になることはなかったし、写真家によってはシャッター音の小さなレンズシャッター機を好んでいたと記憶している。(余談だけれども、ニコンF4(フィルム一眼レフカメラ)でSilentモードが初めて搭載された時は、その音の小ささに感激したことを覚えている。)

iPhoneのシャッター音には、単なる騒音という問題以外にも、必ず音が出ることから、被写体(撮影できるもの)や撮影できる場所・環境に制限が出ることにつながり、あるいは撮影を躊躇することにつながり、それが日本の写真文化の発展の阻害・後退につながることも危惧される。

iPhoneのシャッター音には、茂木健一郎氏によれば、周囲の人のプライバシーの侵害になるという問題もあるという。
引用元: http://blogos.com/article/171433/

日本の携帯電話・スマホのシャッター音のルーツを調べると、2000年のJ-PHONE(SoftBankの前身であるVodafoneの前身)のカメラ付き携帯電話、いわゆる「写メール(写メ)」にたどり着く。開発者がマナーモードでシャッター音を鳴らすべきか否か悩んでいたところ、田代まさし氏が東横線で盗撮して逮捕される事件が発生し、その事件がきっかけとなってマナーモードでもシャッター音を鳴らすことが決定したという。
引用元: https://www.buzzfeed.com/daichi/why-japanese-smartphone

このシャッター音、法的根拠があるものではなく、あくまでも携帯電話業界の自主規制である。また、デジカメにはシャッター音規制はなく、たとえ小型のデジカメであっても音が鳴らないのが普通である。

まずiPhoneのシャッター音が迷惑行為に対する抑止になっているかを考えてみると、消音カメラアプリがあること、さらに音を出さずに撮影できる装置は多数存在することを考えると、抑止にはつながっていないと考えられる。

ただ「外国版iPhoneはシャッター音を消せる。シャッター音は迷惑行為に対する抑止になっていない。だから、日本版iPhoneもシャッター音を消せるようにするべき」の論法では、何も変わらないと思う。迷惑行為自体は現に存在しているわけだし、Appleとしてもこのままシャッター音を消せるようにしてしまえば「迷惑行為必須ツールのiPhone」みたいになってイメージを損ねることになり、そうした事態をAppleは恐れているはずだからである。単にシャッター音を消せばいい、ではなく、迷惑行為を抑止しつつ、正常な撮影行為時にはシャッター音が鳴らないような仕組み・方法を考えなければならない。

前述の記事にあるように、写メール時代とは違い、今のスマホには各種センサー(加速度センサー、ジャイロセンサー、指紋センサー(TouchID)など)が備わっているので、これらを使って、正常な撮影動作と迷惑行為としての撮影動作を区別し、正常な撮影動作時にはシャッター音を消せるようにするのが本道と思う。前述の記事にあるように撮影者の状況(歩いている、電車に乗っている、エスカレーターに乗っているなど)をセンサーで区別してシャッター音を消す、もひとつの手法だし、正常な持ち方(レンズ面・液晶画面が地面に対して垂直になるような持ち方)であればTouchIDに指を置いた状態でシャッターを切れば消音できる、逆に迷惑行為が疑われる持ち方の場合は、シャッター音を必ず鳴らす、等々、考えれればいくらでも正常な撮影動作と迷惑行為の撮影動作を区別するためのアイデアは出てくるはずである。

iPhone7/iPhone7 Plusでイヤホンジャック(イヤホン端子)というレガシーな業界標準を葬ったAppleには、日本の携帯電話業界の「強制シャッター音」という写メール時代から続くレガシーな自主規制を英知でもって葬り去ってくれることを願うばかりである。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
error: Content is protected !!