ドラレコ/産業用SDカードとSSDの総書込可能容量(TBW)比較

Raspberry Pi 4(以下、ラズパイ4もしくはラズパイ)で自宅サーバーを構築するにあたって、ストレージとして使うマイクロSD(microSD)カードの総書込可能容量(TBW)が気になったので、調べてみました。

ラズパイ用にマイクロSDカードを購入する際に、頻繁に書き込みの発生するストレージに使うことを考慮して、より耐久性が高いと思われるドライブレコーダー用マイクロSDカードを購入したもののTBW(総書込可能容量)の比較検討までは行わなかったので、あらためて調べてみました。

ドライブレコーダー用マイクロSDカードに加えて、産業用マイクロSDカード(業務用途用、工業用途用、組み込み用途用、監視カメラ用等とも呼ばれる)、さらに比較のために(サーバー用ではない)一般用のSSDについても調べることにしました。

1. 比較対象
2. TBW値算定
3. TBW値一覧
4. 考察とまとめ

1. 比較対象

以下のドライブレコーダー用/産業用マイクロSDカード、およびSSDについて、TBW値を比較します。原則128GBの容量の製品について調べましたが、128GBの容量の製品がないものについては、異なる容量の製品について調べ、その旨明記しています。


(1)SanDisk(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、SDSQQNR-128G-GHEIA)
(2)Samsung(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、MB-MJ128GA/EC)
(3)Transcend(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、TS128GUSD350V)
(4)Transcend(産業用マイクロSDカード、128GB、TS128GUSD420T)
(5)Transcend(産業用マイクロSDカード(SLCモード)、64GB(※1)、TS64GUSD230I)
(6)Samsung(SSD、250GB(※1)、860_EVO(MZ-76E250BW))

※1: 128GBの容量の製品がなかったので、異なる容量の製品のTBW値を調べています。

2. TBW値算定

TBW値については、メーカーがTBW値を公表している場合はその値を採用し、メーカーが公表していない場合は商品紹介に書かれている情報(例:1920x1080p@26Mbpsで10000時間の耐久性)を元にTBW値を算定(推定)することとします。

以下、TBW値の算定過程を記します。

(1)SanDisk(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、SDSQQNR-128G-GHEIA)
Amazonの商品紹介ページに「1920x1080p@26Mbpsで10000時間の耐久性」と記載があったので、この情報を元に算定・推定します。

(26/8)*3600(sec/hr)*10000(hr)/(1024*1024) ≒ 111TBW(推定値)

(2)Samsung(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、MB-MJ128GA/EC)
スマホでAmazonの商品紹介ページを開くと「最大43,800時間(※)の高耐久設計 ※26Mbpsで録画されたフルHD(1920x1080)ビデオコンテンツの場合の時間」と表示されたので、この情報を元に算定・推定します。余談ですが、パソコンで商品紹介ページを開いても、26Mbpsというビットレートは表示されませんでした。

(26/8)*3600(sec/hr)*43800(hr)/(1024*1024) ≒ 488TBW(推定値)

(3)Transcend(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、TS128GUSD350V)
Amazonの商品紹介ページに「耐久性/最大170TB」と記載があったので、この情報をそのままTBW値として採用します。170TBWとなります。

(4)Transcend(産業用マイクロSDカード、128GB、TS128GUSD420T)
Amazonの商品紹介ページに「TBW, 128GB=320TB」と記載があったので、この情報をそのままTBW値として採用します。320TBWとなります。

(5)Transcend(産業用マイクロSDカード(SLCモード)、64GB(※1)、TS64GUSD230I)
Amazonの商品紹介ページに「TBW, 64GB=5800TB」と記載があったので、この情報をそのままTBW値として採用します。5800TBW@64GBとなります。

(6)Samsung(SSD、250GB(※1)、860_EVO(MZ-76E250BW))
Samsung 860 EVOに「MZ-76E250BW (250GB) 5 Years or 150 TBW」と記載があったので、この情報をそのままTBW値として採用します。150TBW@250GBとなります。

※1: 128GBの容量の製品がなかったので、異なる容量の製品のTBW値を調べています。

3. TBW値一覧

算定したTBW値を以下にまとめます。

(1)SanDisk(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、SDSQQNR-128G-GHEIA)
111TBW(推定値)

(2)Samsung(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、MB-MJ128GA/EC)
488TBW(推定値)

(3)Transcend(ドライブレコーダー用マイクロSDカード、128GB、TS128GUSD350V)
170TBW(メーカー公表値)

(4)Transcend(産業用マイクロSDカード、128GB、TS128GUSD420T)
320TBW(メーカー公表値)

(5)Transcend(産業用マイクロSDカード(SLCモード)、64GB(※1)、TS64GUSD230I)
5800TBW@64GB(メーカー公表値)

(6)Samsung(SSD、250GB(※1)、860_EVO(MZ-76E250BW))
150TBW@250GB(メーカー公表値)

※1: 128GBの容量の製品がなかったので、異なる容量の製品のTBW値を調べています。

4. 考察とまとめ

「SLCモードの産業用マイクロSDカード(5)は別格として、ドライブレコーダー用/産業用マイクロSDカード(1)〜(4)のTBW値はSSD(6)と比べて遜色ない水準にある」と考えられます。なので「すぐに壊れてしまいそう」と過度に恐れる必要はないと思われます。(もちろんデータのバックアップ等ストレージの障害対策は必須です。)

Samsungのドライブレコーダー用マイクロSDカード(2)のTBW値は、SanDiskのドライブレコーダー用マイクロSDカード(1)のTBW値の4倍以上あります。Amazonでの販売価格はSanDiskのものよりも割高であるものの、この違いなら納得、というところでしょうか。(もちろん、TBW値以外にもマイクロSDカードを評価する要素はありますが。)もっとも、SanDiskのTBW値でも、用途によっては、実用上は十分なようにも思われます。

またTranscendの産業用マイクロSDカード(4)のTBW値については、注意が必要です。なぜなら、Transcendの産業用マイクロSDカード(4)のTBW値がどのようなワークロード(使い方)で算定されたのかが不明だからです。ドライブレコーダー用マイクロSDカードについては、長時間連続録画というワークロードが前提にあり、ビットレートと最大録画可能時間を元に算定(推定)しましたが、Transcendの産業用マイクロSDカード(4)のTBW値については、算定の根拠となったワークロード自体が不明なので、ドライブレコーダー用マイクロSDカードのTBW値との単純比較はできません。

また、ドライブレコーダー用/産業用マイクロSDカードの耐久性がSSDと同水準かというと、そうとは限らないです。なぜなら、TBW値はワークロード(使い方)によって大きく変動するからです。TBW値はあくまでも目安でしかなく、同じワークロード(使い方)で算定したTBW値を使わない限り、マイクロSDカードとSSDの比較はできません。

マイクロSDカードにはウェアレベリングの機能が入っているものの、SSDのウェアレベリングと完全に同等とは限らない可能性もあります。

また、TBW値だけでマイクロSDカードの耐久性を評価できるわけでもありません。例えば、マイクロSDカードは、SSDとさほど変わらない容量がSSDよりも小さいスペースに納められており、その箇所に対してパソコンと同等のワークロード(使い方)をかけて、TBW値以外の要素、例えば発熱他の観点で本当に問題ないのかどうかは検討を要すると考えられます。

SLCモードの産業用マイクロSDカード(5)については、TBW値については桁違いであるものの、最大読み出し速度/書き込み速度がいずれも約20MB/secと遅めであり、用途によってはあまり適さないものと考えられます。

ですので、TBW値の大小を気にするよりも、ドライブレコーダーにはドライブレコーダー用マイクロSDカード、産業用には産業用マイクロSDカードを使うべきです。特に自動車車内は、夏場は高温多湿、冬場は低温という過酷な環境になるので、そうした点を考慮して設計されているドライブレコーダー用マイクロSDカードを使うべきです。それと同時に、マイクロSDカードは消耗品と割り切り、映像音声が正しく記録されない等の障害が発生する前に、定期的に交換することも重要です。

同じ製品で少しでもTBW値をかせぎたいのであれば、より大容量の製品を選ぶことでTBW値をかせぐことができます。

ラズパイを自宅で運用する用途については、設置環境については自動車車内/産業用製品ほど過酷な環境下にはならないものと考えられ、ドライブレコーダー用/産業用マイクロSDカードを使っても差し支えないものと考えられます。一般用途(デジカメ・スマホ)用マイクロSDカードよりもドライブレコーダー用/産業用マイクロSDカードを使う方が耐久性が向上するのは明らかであり、ラズパイの信頼性・安定性向上を目的にドライブレコーダー用/産業用マイクロSDカードを使うのはおおいにあり、だと思います。

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