モバイルデータ通信の料金プランを考える

モバイルデータ通信の料金プランについて考える。話が混乱しないようにMNO(ドコモ本家とか)とMVNO(IIJ,OCNとか)を分けて考える。

LTE回線用のMNOのモバイルデータ通信の料金プランは下記のようなものとなるが、ユーザーからすれば窮屈、不便なだけである。

(1)速度制限なしで高速通信可能であるものの、高速通信できるデータ量に制限があるもの。

MVNOのモバイルデータ通信プランには上記(1)に加えて、下記のようなものもあるが、窮屈、不便なことには違いがない。

(2)実効速度は遅いものの、いちおう高速通信可能で、高速通信できるデータ量に制限がないもの。
(3)高速通信不可能であるものの、通信できるデータ量に制限がないもの。

ユーザーの立場から見て理想的な料金プランは、MNO、MVNOの場合とも下記である。

(*)実効速度の速い本当の高速通信が無制限で使える。

この料金プランが成立したのは3G回線時代までである。回線速度はHSDPAでもたかだか14.4Mbps程度(実効速度は数Mbps程度)であり、大量のデータ転送量を必要とするサービスもそれほど普及しておらず、ユーザーへの定額の課金だけで、バックボーンの整備費用(MNO内の回線、トランジット回線、ピアリング回線)及びトランジット料の支払いを賄えていたからと考えられる。

LTE回線になってからは、高速通信に制限がかかる料金プランになってしまった。動画配信サービスの利用などで毎月大量のデータ転送をするユーザーが出てきてしまい、ユーザーへの定額の課金だけではバックボーンの整備費用及びトランジット料の支払いを賄えなくなったためと考えられる。なおMVNOの場合、バックボーンの整備費用及びトランジット料に加えて、MNO側に支払う接続料も賄う必要がある。この接続料がMVNO事業者には大きなコスト要因になっており、また実際の通信時にはMNO-MVNO間の通信部分がボトルネックになっているという話を聞いたことがある。

この問題を根本的に解決できる切り札は、超高速なバックボーンの低コストでの敷設を可能にする技術革新しかない。光ファイバー通信に技術革新があり、「コストは従来の1/10、速度は従来の10倍」となる技術革新があれば、「高速通信が無制限で使える時代」が戻ってくるかもしれない。でもそうなっていないということは、そういった技術革新にたどり着けていない、実用化できていない、ということなのだと思う。

ユーザーへの定額の課金だけで賄えないなら、大量のデータ転送の原因を作っているサービスの提供事業者(動画配信事業者、アカマイみたいなCDN事業者)への課金を模索する動きもあってよさそうだが、これも課金モデルが成立できたとは言い難い。

となると、しわ寄せは結局ユーザーに来ることになり、上記(1)なり(2)、(3)のような料金プランとなってしまう。MNO(MVNO)、ユーザーとも納得の持続可能な料金プランがないかどうか。

毎月のデータ転送量が、バックボーンの整備費用、トランジット料の支払い(およびMVNOの場合はMNOへの接続料も)に困らない程度の一定の範囲以内に収まること、でもユーザーは不便なく、各種サービスを使えること。例えば、こんな料金プランはどうだろう。
(*)Webサイトを閲覧するときは500kbps、動画閲覧時は3Mbps、ファイルダウンロード時は速度制限なし、のように利用するサービス毎に転送速度が変わるようなプラン。オプションで、毎月定額(例えば10000円/月)を払えば、動画閲覧時も速度制限なしになって高画質の動画閲覧可能になるとか。

500kbps、3Mbps、速度制限なし、の3種類の転送速度と言ったが、IIJmioやOCNモバイルONEの高速通信ON/OFF機能みたいに転送速度を一斉に切り替えるのではなく、3種類の転送速度のパケット配送経路を同時に使えるようにしておき、流れてきたIPパケットを3種類の配送経路に振り分ける、といった方式がいいのではと思う。技術的に実現可能かどうか、よくわからないが。

以下、余談。

前述記載通り、IIJmio、OCNモバイルONEには高速通信ON/OFF機能はあるものの、高速通信(速度制限なし)と低速通信(200kbps)の2種類だけで中速(3Mbps)がないし、用途・アクセス先に応じて高速通信を手動でON/OFFするのは面倒だと思う。

MVNOの有するバックボーンを考えていたら、「格安SIMを選ぶのあれば、ティア1のバックボーンを有するNTTコミュニケーションズのOCNモバイルONEか、やはり強大なバックボーンを有するIIJのIIJmioを選んでおくのが無難」という気がしてきた。強大なバックボーンを有する事業者ということでホスティング事業者のさくらインターネットがドコモMVNO事業に乗り出して来たらおもしろそうだが、そもそもさくらインターネットはISPではないし、実現することはないと思う。

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