3G(FOMA)の停波時期を予想する

3G(FOMA)の停波時期がいつ頃になるか、考えてみた。

3G(FOMA)が停波するには、下記事項を考慮する必要がある。なお、3Gといった場合、ドコモ、SoftBank、ワイモバイル(旧イーモバイル)が運用している3G(UMTS,HSPA,W-CDMA)と、auが運用している3G(CDMA2000 1x,CDMA/EVDO)があるが、ここではドコモが運用している3G(UMTS,HSPA,W-CDMA)すなわち3G(FOMA)のみに特化して考えることにする。また停波については、利用状況・需要だけでなく、総務省の意向も影響すると思われるが、ここでは利用状況・需要だけで考えることとする。

(1)国内契約ユーザーの音声通話
(2)国際ローミング受け入れ(ローミングイン)
(3)M2M(Internet of Things,いわゆるIoT)機器向け通信モジュール

これまでのLTE端末はデータ通信はLTEで行うものの、音声通話は3Gで行っていたので、3Gの停波は考えづらかったが、LTEネットワーク上での音声通話を可能にするVoLTEがサービス開始されたことから、音声通話のためだけに3Gを残す必然性がひとつ減ったことになる。ガラケー(フィーチャーフォン)が3G端末として残っているものの、これについても、ガラホ(スマホ用部品を用いたガラケー)の登場が噂されており、VoLTE対応のガラホが登場すれば、ガラケーユーザーも移行が可能になる。

ドコモのLTEエリアカバー率は2015年3月末にはFOMAとほぼ同等になる見込みであることから、2015年に発売されるフィーチャーフォンは3G/LTE両対応のガラホのみになり、2016年以降に発売されるフィーチャフォンはLTEのみの対応になると予想。フィーチャーフォンの修理可能期間が生産終了後6年から7年程度であることも考慮して、既に発売済みの3Gのみ対応のフィーチャフォンの修理可能期限を迎える2021年から2022年を目標に3Gのみに対応している端末をフェードアウトさせていくことになるのではないか?

(1)の視点から見た停波可能時期は、さらに数年の猶予を見て2023年から2025年頃といったところか?停波よりも早いタイミングで、FOMA契約の新規契約受付・契約変更受付が終了となるはずである。

(2)のローミングインの観点からは、停波の見通しを立てるのは難しい。外国では、2G(GSM)の停波がようやくこれからかという状況、しかも現時点で停波をアナウンスしているのはアメリカのAT&Tくらいなもので、3G(UMTS)の停波をアナウンスしている携帯電話事業者は皆無だからである。それどころか新興国では、ようやく3Gのサービスが始まったばかりというところもある。ローミングインの観点から3G(FOMA)の停波を検討できるようになるのは、外国でVoLTE対応の端末が広く普及し、ほとんどの外国の携帯電話事業者からLTE/VoLTEでのローミングインを受け入れるようになり、外国で3G(UMTS)の停波が計画されるようになってからのことと思う。3G(UMTS)が停波されるのは、5Gが登場してから後の話になるであろうから、新興国からのローミングインのことも考えると、(2)の視点からは、どんなに早くても2030年頃までは停波しないのではないか?

(3)のM2M(IoT)向け通信モジュールの観点についても、停波の見通しを立てるのは難しい。Xi/FOMA両対応の通信モジュールもあるものの、FOMAのみ対応の通信モジュールもいまだに販売されているからである。FOMAのみ対応の通信モジュールが販売終了となり、Xiのみ対応の通信モジュールが販売されるようになるまで5年程度かかり、さらに既に市場に出回ったFOMAのみ対応の通信モジュールが組み込まれた機器の耐用年数、修理受付期間(FOMA用ユビキタスモジュールについて調べると、新規販売受付終了からおおよそ6年後に修理受付終了のようである)などを考えると、早くても2030年頃までは停波しないのではないか?

国内契約ユーザーは、携帯電話事業者各社の施策があれば比較的早期にLTEへ移行できると思うけれども、一番時間がかかりそうなのが、「ローミングイン」と「M2M(IoT)向け通信モジュール」のLTEへの移行である。

国内契約ユーザー、特にフィーチャーフォンユーザーを早期にLTEへ移行させた上で、ローミングインとM2M(IoT)用に、2.1GHz帯と800MHz帯に必要最低限の帯域幅(5MHz幅)を残した上で、おそらく15年以上先のことになると思われる3G(FOMA)停波まで細々とFOMA基地局を運用していくことになるのではないかと予想する。

M2M(IoT)向け通信モジュールのLTEへの移行にあたっては、料金プランからの施策も必要と思われる。M2M(IoT)向け通信モジュールでは、LTEの数十Mbpsといった高速通信は必要なく、数百Kbps程度で十分、という用途も多いと思われる。最近ドコモMVNOで見かける「通信速度は数百Kbps、料金は月額500円程度」というプランはこういった用途と相性がよい。

3G(FOMA)停波の話から外れるが、外国での2G(GSM)の停波時期についても考えてみたものの、やはり「ローミングイン」と「M2M(IoT)向け通信モジュール」の観点から、停波を計画するのは難しそう。2G(GSM,GPRS,EDGE)のみに対応の通信モジュールが現在でも販売されているみたいなので。

外国での停波ということで、スウェーデンのNMT(1G, Nordic Mobile Telephoneの略、NMT-450)が停波するまでの状況が参考になりそうなので調べていたところ、おもしろくなってきてしまい収拾がつかなくなってきたので、今回はここまでということで。(スウェーデンでNMT-450が停波したのは2007年。ちなみにドコモのmova(2G)の停波は2012年。)

[2016/08/21追記]
ドコモのM2M向けモジュールを調べたら、FOMA用の販売が続いており、かつ新規販売終了時期も未定となっている。ソフトバンクについても、3G用のM2Mモジュールの販売が続いている。既に販売した製品の寿命(交換時期)・修理受付対応、およびローミングインを考えると、2020年の東京オリンピックまでの3G(FOMA)停波は明らかに無理(というかあり得ない)と断言できる。

[2016/12/21追記]
2016.11.2にドコモから「ドコモケータイ(iモード)出荷終了」のお知らせが発表された。これによれば、以下の通りである。
(1)iモード対応のフィーチャーフォン(ガラケー)は、2016年11月~12月を目途に出荷終了。
(2)iモード対応のらくらくホンは出荷継続。
(3)iモードサービスは引き続き使える。(終了時期は明言されず。)
iモード対応らくらくホンの出荷が継続されること、FOMA機であるspモードケータイのSH-06G(AQUOSケータイ)、F-05G(ARROWSケータイ)、法人向けFOMA機であるspモードケータイのSH-03H、バーコードスキャナ搭載FOMAケータイF-05Bは継続販売されること、FOMA対応M2Mモジュール(FOMAユビキタスモジュール)の販売も継続されていること、iモードサービスの終了やFOMA契約受付終了についてアナウンスされていないこと、等々を考慮すると、3G(FOMA)の停波については、まだ心配する必要はない。おそらく3G(FOMA)が停波するのに先立ち、先にiモードのサービスが終了になるのではと思う。

[2016/12/25追記]
2016.12.21より、ドコモオンラインショップでFOMA機のspモードケータイSH-06G、F-05Gを一括ゼロ円で販売している。機種変更も対象になっており、さらにFOMAの料金プランも対象になっている(カケホーダイ契約は必須ではない)など、iモードケータイの既利用者を一気にspモードに切り替えさせてiモードサービス終了に向けてはずみをつけようという、施策の一環なのではと思う。Xi機のspモードケータイではなくFOMA機のspモードケータイでこうした施策を行っていることから、3G(FOMA)停波については、まだ巻き取りその他の施策を行う段階に至っていない、というか3G(FOMA)停波よりもiモードサービス終了の方を急いでいるのではと思う。

[2017/1/6追記]
M2M向けに020番号の使用を2017年10月から開始することをNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは発表した。これはM2M等専用番号として020番号帯を使用すること等を定めた省令が施行されたことに伴うものである。
音声通話、データ通信の国際ローミング受け入れのみならず、M2M用通信モジュールの国際ローミング受け入れという視点で考えた場合も、3G(FOMA)の停波は難しそうである。3G(W-CDMA)は、国際的に使用する電波の周波数帯がおおよそ統一されているのに対し、LTEは地域によって使用する周波数帯(LTEバンド)が異なり断片化が起こっていることを考えると、例え全世界のLTEバンドすべてに対応したチップがあったとしても、実際のM2M用通信モジュールの検証作業等の手間・そのためのコストを考えると、周波数帯が断片化しているLTEよりも、統一されている3G(W-CDMA)の方がM2Mに適しているという面は否めないのではと思う。

[2017/8/1追記]
日刊工業新聞がインタービューした記事によれば、「3Gの終了時期は、2025-2030年頃になる」との見方をNTTドコモの吉沢和弘社長が示したとのこと。「3Gは2001年に導入されており、使用期間は一つの世代で約20年であり、本来なら2020年くらいには終わらせたい」「法人向け機器モジュールについては、『取り換え時期にならないと交換できない、設置場所もさまざま』等の理由から2020年の3G停止は無理、ただし2030年まで長引くことはない」とのこと。最短でも2025年、すなわち8年後であり、3Gのガラケーはまだまだ使える。

[2018/11/3追記]
こちらの記事によれば、3Gサービスの終了時期について「2020年代半ばを目指して進める」とNTTドコモの吉沢和弘社長が言及したとのこと。2020年代半ばということで2025年前後がひとつの目安になるものと考えられる。その場合でも現在(2018年)から7年先であり、3G(FOMA)ガラケーは当面使える。

初稿:2015.1.12
最終更新日:2018.11.3

参考にした記事
http://www.gizmodo.jp/2013/04/lte_xi.html
http://www.gsma.com/newsroom/press-release/gsma-publishes-new-report-outlining-5g-future/
http://www.telguard.com/2GSunset/Overview
http://computersweden.idg.se/2.2683/1.461549/gsm-borta-om-tio-ar

[M2M(IoT)向け通信モジュール]
http://m2m.gemalto.com/
http://www.sierrawireless.com/

[ドコモ]
https://www.nttdocomo.co.jp/service/world/inroaming/
http://www.docomo.biz/html/service/module/
https://www.seiko-sol.co.jp/hardware/mb/hm-m100/index.html

[ソフトバンク]
http://mb.softbank.jp/en/romingin/en/
http://mb.softbank.jp/biz/m2m/product/

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