証券会社にお金を預けても大丈夫?

初めて証券会社に口座(証券口座)を開く時、「証券会社にお金を預けても大丈夫なのだろうか?」と不安に感じました。その不安に対してどのようにして対処し、証券口座開設にまで至ったのかを書こうと思います。

投資信託積立をしたくなり、最初は既に預金口座を持っている銀行で積立するつもりでした。でも調べてみたところ、証券会社と比べて、銀行は取り扱っている投資信託の銘柄が少ない。今後本腰を入れて投資運用に取り組んでいくつもりであること、投資運用に関する知識が豊富になり理解が深まるにつれて投資信託以外の金融商品も購入したくなる可能性が高いことを考えると、「投資信託の取り扱い銘柄が豊富で、投資信託以外の金融商品、例えば個別株やETF等も購入できる証券会社」にしておいた方が無難である、と考え、「証券会社に口座を開設してみよう」と考えるに至りました。

とはいったものの、人生初めての証券口座開設ということで、いろいろと不安になりました。

不安に感じたことを大別すると、以下のようになります。

(1)預けたお金が証券会社の運転資金に流用されたりすることなく、自分のお金として管理されるのか?
(2)証券会社を信用しても大丈夫なのか?
(3)20年後も存続できるような証券会社とは?
(4)お金を証券会社の口座に移すのが面倒なのでは?

銀行・ゆうちょ(ゆうちょ銀行、郵便貯金)にお金を預けて不安になったことはありませんが、銀行以外のところにお金を預けて本当に大丈夫なのかどうかがわからず、不安になりました。なぜ不安になったのかというと、銀行ではないからです。なんだか理由の説明になっていませんが、要は銀行以外の金融業者を信用していない、というか、「銀行以外の金融業者にお金を預けても大丈夫なのかどうか」がまったくわからなかったのです。銀行以外の金融業者にお金を預けても大丈夫、という確信が持てなかったのです。

■(1)預けたお金が証券会社の運転資金に流用されたりすることなく、自分のお金として管理されるのか?

以下、調べた内容を記します。最初は証券会社各社、日本証券業協会、金融庁等のサイトにある記載を読んでいたものの、法令と照らし合わせながら読める程度にまで細かく、かつ網羅的に書いてあるところを見つけられなかったので、結局関係法令一式に目を通すはめになりました。できればこういった大事なことは、日本証券業協会のサイトにでも書いておいて欲しいです……

証券口座を開設したら、最初に銀行の預金口座から振り込み等で入金しますが、こうして証券口座に入金されたお金は、分別管理(証券会社自身のお金と分けて管理すること)が義務付けられています。(「金融商品取引法」第43条の2第1項)

こうしたお金を法令上は顧客分別金と言いますが、この顧客分別金については、信託業務を行っている会社(信託銀行等)に信託することが義務付けられています。(「金融商品取引法」第43条の2第2項、「金融商品取引業等に関する内閣府令」第141条)主だった証券会社(野村證券、大和証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券等)について調べてみたところ、すべて信託銀行に信託しているみたいです。ただし、信託銀行への預け方は必ずしも預金(信託銀行への預金)でなくてもよく、例えば国債等の有価証券の信託でもいいみたいです。(「金融商品取引業等に関する内閣府令」第141条)

なお信託銀行はこうして預かった資産を自社の資産とは分けて信託財産として扱う(分別管理)ことが義務付けられており(「信託法」第34条)、さらに信託財産に対して強制執行、仮差押え、仮処分、競売などをすることは禁止されていますし、仮に違反してこうしたことが行われてしまった場合は、受託者(信託銀行)や受益者(投資家)が異議を主張することが認められています。(「信託法」第23条)要は、証券会社が仮に破たんしても、債権者がこうした財産に対して仮差押え等をすることはできず、結果として投資家が預けたお金(顧客分別金)は守られるということです。

仮に証券会社が分別管理を行わず、例えば預かり金を会社の運転資金に流用等した上で破綻し、投資家に返金できない事態になった場合でも、投資者保護基金により1000万円まで補償されます。(「金融商品取引法」第79条の56)なお証券会社は投資者保護基金への加入が義務づけられています。(「金融商品取引法」第79条の27)銀行の場合は預金保険制度により1000万円まで補償されますが、これの証券会社版と思えばわかりやすいです、というか預金保険制度に相当するものが証券会社についても存在するということです。

ここまでの話をまとめると、証券口座に入金したお金も、銀行に預けたお金同様に守られているということです。

では証券口座に入金したお金で株式や投資信託を購入したとして、こうした株式や投資信託(有価証券)は、証券会社の資産に勝手に流用されたりすることなく、果たして守られるのでしょうか?

国内株式(日本国内の証券取引所で売買する上場株式)、外国株式(外国の証券取引所で売買する上場株式)、投資信託(「投資信託及び投資法人に関する法律」でいうところの委託者指図型投資信託)の3種類について調べてみました。

まず「金融商品取引法」第43条の2第1項の定めにより、国内株式・外国株式・投資信託のいずれであっても、証券会社は分別管理する必要があります。

国内株式の場合、証券保管振替機構の株式等振替制度にて混蔵保管(証券保管振替機構の帳簿上では証券会社の持ち分と顧客の持ち分とを分けて管理、顧客毎の持ち分は証券会社の帳簿上で管理、混蔵寄託ともいう)、外国株式の場合は海外の保管機関(例:The Depository Trust Company (DTC))にて混蔵保管(海外保管機関の帳簿上では証券会社の持ち分と顧客の持ち分とを分けて管理、顧客毎の持ち分は証券会社の帳簿上で管理、混蔵寄託ともいう)となっているみたいです。

投資信託については、投資信託を購入すると、購入代金は販売会社(証券会社)を経由して、受託会社(信託銀行)に入り、委託会社(運用会社)は受益権(受益証券)を発行します。(「投資信託及び投資法人に関する法律」第2条第7項、第6条)信託銀行は預かった資産を自社の資産とは分けて信託財産として扱う(分別管理)ことが義務付けられており(「信託法」第34条)、運用会社の指図に従って管理を行います。投資信託の受益証券は、証券保管振替機構の投資信託振替制度にて管理され、証券会社は投資信託受益証券を自社の持ち分と顧客の持ち分とを分けて、分別管理します。

国内株式・外国株式・投資信託のいずれにしても分別管理されているので、仮に証券会社が破綻したとしても、債権者が差し押さえることはできず、さらに投資信託については信託財産となっており、信託財産に対して強制執行、仮差押え、仮処分、競売などをすることは禁止されていますので(「信託法」第23条)、証券会社・信託銀行・運用会社のいずれが破綻しても、預けた資産は守られることになります。

証券会社の分別管理不備等により、証券会社が破綻し、投資家に返金できない事態になった場合に投資者保護基金で1000万円まで補償されるのは、国内株式・外国株式・投資信託の場合も同様です。さらに証券保管振替機構で管理される国内株式・投資信託については、仮に入力ミス等により振替機関(証券保管振替機構)もしくは口座管理機関(証券会社)の帳簿上に誤記録が発生して受益者(投資家)に損失が発生した場合は、加入者保護信託で1000万円まで補償されることになっています。(「社債、株式等の振替に関する法律(通称:振替法)」第51条(旧「株券等の保管及び振替に関する法律」))

余談ですが、投資者保護基金については証券各社や日本証券業協会のサイトに書かれていますが、加入者保護信託について書いているところは証券保管振替機構くらいなもので、証券各社や日本証券業協会で書いてあるところを見つけられませんでした。法律にしっかり書いてあることなのに、なぜ触れられていないのでしょうか?

まとめると、証券会社で購入した国内株式・外国株式・投資信託のいずれについても、守られる仕組みができていることがわかります。(もちろん「元本割れしない」という意味ではありませんし、「元本割れした場合の損失が補てんされる」という意味でもありませんが。)

■(2)証券会社を信用しても大丈夫なのか?

預けたお金にしても購入した株式や投資信託にしても、守られる仕組みができていることはわかったものの、直ちに不安が解消されたかというと、そんなことはありませんでした。「野村證券や大和証券といった老舗の証券会社なら大丈夫そうだけども、投資信託の取扱い銘柄が少ない。やっぱり投資信託の取扱い銘柄が豊富なネット証券に口座を開設したい、でもネット証券は創業して20年程度の若い企業が多く、社内体制が未熟なこと等に起因するトラブルに巻き込まれるのではないか」となかなか不安を解消できなかったのです。

そこで、金融庁のサイトで行政処分歴を調べたり、ネットでトラブル情報を収集しました。証券会社名を具体的に書くのは控えますが、インサイダー取引等に伴う処分歴や事実かどうかはともかくトラブル情報が何件かありました。処分歴については、「処分歴がある証券会社は無条件で避ける」ではなく、「顧客を欺くタイプの不祥事だったのかどうか?」で判断することにしました。若い企業、特に創業して10年以内程度の企業であれば、若気の至りというか、社内体制が未熟だったり不備があったこと等に起因して不祥事が出てしまうのは致し方ない、大事なのは「企業体質として顧客を欺きそうな会社」でないかどうか、不祥事を起こした後の対応、特に再発防止策がどのようなものか、さらにそれが有効に機能しているかどうか、顧客を大事にする企業となって成長できているかどうか、だと。これらについて可能な範囲で調べて考察を重ね、「ネット証券に口座を開設しても大丈夫だろう」と思えるところまで到達しました。

■(3)20年後も存続できるような証券会社とは?
「ネット証券に口座を開設しても大丈夫だろう」と思えるところまで到達したものの、「投資運用は長期に及ぶもの。いちおう投資家保護の仕組みがあるけれども、投資運用期間中に破綻・廃業してしまいそうな証券会社は嫌だ」と考えました。

そこで、主要ネット証券各社の特徴・強みを調べてみました。

【SBI証券】SBIグループの中核企業であり、ネット証券各社の中で口座数最大であること。住信SBIネット銀行との連携に強みあり。
【楽天証券】楽天グループの企業であり、楽天経済圏に属していること。楽天銀行との連携に強みあり。
【マネックス証券】システムを内製化していること。アメリカの証券会社を傘下におさめていること。米国株取引に強みあり。
【カブドットコム証券】システムを内製化していること。MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)に属していること。(=「寄らば大樹の陰」ならぬ「寄らば三菱の陰」が期待できるかもしれないこと。)

今後20年間にわたって金融業界がどのように変化していくのかは想像できませんけれども、証券会社として存続していくためには、業界を取り巻く変化に対応できること、かつ他社に負けないような特徴・強みを発揮できること、が肝要と考えられます。

上記特徴・強みを見る限り、主要ネット証券各社とも、現時点で「他社に負けないような特徴・強み」を持っていると考えられ、どこを選んでも大丈夫だろうと考えました。強いて言うなら、システムを内製化しているマネックス証券とカブドットコム証券には、Fintech(フィンテック)他環境の変化への対応という点では大きなアドバンテージがあるように思います。

一方、投資家の声によく耳を傾けているか否かという点では、SBI証券や楽天証券が一歩抜きん出ているように思います。マネックス証券やカブドットコム証券が投資家の声を無視している、というほどではないですが。

生き残れそうな証券会社か否かを考える時、山一證券の経営破綻・自主廃業について考えないわけにはいきません。損失隠しに起因する不正会計が山一證券の経営破綻・自主廃業の原因ですけれども、ネット証券で同様の事態が発生しないだろうかという不安については「外部からの監査が有効に機能している」ものと考えることにして、それ以上は考えないことにしました。本当はネット証券各社の財務諸表を分析して、今後生き残れるか否か、財務上の問題、隠れた問題を抱えていないか否かの判断材料にしたいと思ったものの、分析できるだけのスキルもなく、「どのネット証券を選んでも大丈夫だろう」を結論とすることにしました。

■(4)お金を証券会社の口座に移すのが面倒なのでは?

ようやく「どのネット証券を選んでも大丈夫だろう」と思えるところまで到達したものの、「証券口座って、お金を移動するのが面倒なのでは?」と躊躇しました。調べてみたところ、ネット証券であれば、証券会社サイト内から銀行を選んで預金口座番号等やパスワード等を入力して振り込みを実行すれば、多くの場合は振込手数料無料で資金移動(預金口座から証券口座へ)できますし、さらにSBI証券+住信SBIネット銀行(SBIハイブリッド預金)、もしくは楽天証券+楽天銀行(マネーブリッジ)の組み合わせであれば、証券口座と預金口座が一体化したような使い勝手が得られることがわかり、問題なしと考えました。

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ようやくネット証券に口座を開設し、手始めに投資信託を何銘柄か少額購入して、証券会社での取引がどんなものなのかを体験するところから始めました。

実際に注文して、約定、受渡と流れていくのを体験することで、ますます投資信託に興味がわいてきて、気になる投資信託の目論見書をじっくり読んでみたり、投信ブログの記事を読み、その内容を自分なりに解釈してみたり、会社四季報を読んでみたり、どんなポートフォリオが自分には向いているのだろうかと考えてみたり、投資運用関係の書籍を読んでみたりと、ますます興味がわいてきました。証券口座を開設して初めてわかったこと・見えてきたことは間違いなくありましたし、目の前に新しい世界が開けていくのを感じたのです。

証券保管振替機構

日本投資者保護基金

日本証券業協会

投資信託協会

預金保険機構

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