『97%の投資信託がダメなこれだけの理由』書評

『97%の投資信託がダメなこれだけの理由』(著:大島和隆氏)を読みました。

著者が元ファンドマネージャーなので、(失礼ながら)フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)に反する内容のオンパレードかと思いきや、必ずしもそういった内容になっておらず、しかも運用の現場にいた人でなければ書けないような内容も盛りだくさんで、参考になりました。

読んでいて面白かったところ、気になったところを中心に、書かれている内容と書評・感想を記していきましょう。

(1)アムンディのあんしんスイッチについて
(2)毎月分配型投資信託について
(3)アクティブ運用とパッシブ運用について
(4)インデックスファンドの構成銘柄の選別方法について
その他の感想

(1)アムンディのあんしんスイッチについて
「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド(愛称:あんしんスイッチ)」という投資信託があります。特徴はプロテクトラインなるものが設けられていることで、基準価額が上昇してプロテクトラインが引き上げられると、それ以降プロテクトラインが下がることがない、端的に言うと「一度値上がりしたら、そこから値下がりしないファンド」です。

結論から先に言ってしまうと、著者は「投資による収益をお客様が実際に得られる可能性が極めて低い」と一刀両断しており、その結論に至る流れは、下記のようになります。

・プロテクトラインのための保証料が年率0.22%、運営管理費用(信託報酬)が年率1.2204%(税込)で、合計して年率1.4404%(税込)の費用を純資産額から負担することになる。
・プロテクトラインが元本水準の10000円にまで引き上げられるには、年率約7.44%のリターンを上げる必要がある。
・運用方針やアセットアロケーションの観点から、このリターンを上げるのはかなり困難な一方で、継続的にかかってくる運営管理費用と保証料が基準価額引き下げ要因となり、いつかは基準価額がプロテクトラインを下回り、繰り上げ償還される可能性が高いと考えられる。

著者は「このファンドは販売サイドがリードして作った商品と考えられる」と推測しています。このファンドについて(毛流麦花が)モーニングスターで調べてみたら、2018年5月時点での純資産額は約2335億円、資金流入額も2018年3月時点で約100億円、とセールスの観点からは成功しているみたいです。

販売側は儲かるけど投資家側は「安心感」で目くらましされて結局儲からないという、典型的な、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)に反する商品ということですね。

(2)毎月分配型投資信託について
毎月分配型投資信託ブームのきっかけを作った商品は、「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」(通称:グロソブ、運用会社は三菱UFJ国際投信(設定時は国際投信投資顧問))、および「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」(通称:グロイン)です。

これらが大ヒットして、最盛期には残高がグロソブで約5兆7000億円、グロインで約2兆5000億円までいきます。

本来であれば配当金は運用収益から払われるべきで、「運用が上手くいった→高い分配金」という流れができるべきが、追加型投資信託の計数処理に出てくる分配準備積立金を乱用した特別分配金を販売会社の言いなりで出すようになってしまったのが問題の発端です。これが、いわゆる「タコ足型分配」です。

一方で、定期的に投資元本を取り崩してほしいという投資家ニーズは主として高齢者層に存在する、と著者は主張します。

このニーズというのがなかなか理解しがたいのですが、「自分の資産といえども、自由に取り崩せない」という高齢者が多いということらしく、「一度購入しておけば、毎月自動的に振り込まれる」ファンドは、「お小遣いを提供してくれる」数少ない商品とのことです。

現に「年金形式で定期的に元本を取り崩して分配する」ファンドが存在します。例えば、「グローバル・アロケーション・ファンド 毎月決算(目標払出し型) 愛称:世界街道」です。こうしたファンドでは、元本の取り崩しを目論見書で謳っており、投資家を騙したり、誤解を招くこともありません。ここまでが本に記載されている内容です。

毛流麦花が感じるに、投資運用は出口戦略が難しいと思っています。なぜなら、投資運用元本を積み増すことに心理的抵抗はありませんけれども、高齢になって毎月の収入が現役時代に比べて減っているのに、さらにそれらを取り崩していくなんて、心理的負担・抵抗が大きくて、簡単に実行できるとは思えません。

投資運用に長けていない人にもわかりやすい出口戦略を提供する商品として、毎月分配型投資信託が重宝されている、ということなんだろうと思います。安易に毎月分配型投資信託に頼るのではなく、出口戦略についてよく勉強した上で、安心・納得ずくで「殖やす」と「取り崩す」を両立できるようにしたいと感じました。

話がそれますが、三菱UFJ国際投信のブロガーミーティングで山崎元さんが言われていた「グロソブを徹底的にdisってきた自分に、まさか三菱UFJ国際投信の敷居を跨げる日が来るとは思わなかった」旨の意味がようやく理解できたように思います。

(3)アクティブ運用とパッシブ運用について
「パッシブ運用のファンドを上回るリータンをあげられるアクティブファンドは少ない、だからパッシブ運用のファンドの方がいい」という議論には問題があると著者は主張します。「アクティブ運用よりもパッシブ運用のほうが優れている」は、資産運用に関するポピュリズムであるとも言います。

その考えの根拠は下記となります。
・投資運用にベンチマークが導入されたのは、上げ相場・下げ相場に関係なくファンドマネージャーの人事評価を合理的に行うために導入されたのがきっかけであり、そのルーツは年金運用などフル・インベストメントなファンドのためである。
・評価はベンチマークに対する相対評価により行われ、実際の収益がベンチマークを上回っていればいいというものではなく、どのようなリスクをとってどのようなリターンを得たのか、などが評価される。
・アクティブ運用型投資信託のベンチマークは後付けで決定される場合がほとんどである。
・アクティブ運用型投資信託では、運用のテーマやスキームが決まっている一方で、後付けで(テーマ・スキームにそぐわない)ベンチマークを設定しているところに無理がある。運用のテーマやスキームで「○○な業種や企業に投資する」としている一方で、ベンチマークとなる株価指数の構成銘柄の組み入れ比率を上位に維持したままベンチマークを上回る運用を目指す、すなわち二兎を追ってしまっているところに無理がある。
・運用のテーマやスキームに即したベンチマークを設定し、その一兎しか追わないのであれば、ベンチマークをアウトパフォームするのは簡単である。できないのだとしたら、ベンチマークの設定を誤っているのか、もしくは運用が下手かのどちらかである。
・ベンチマークをアウトパフォームするだけであれば、けっして難しいことではない。すなわち、アクティブ運用よりもパッシブ運用の方が優れているというわけではない。

上記のように、これまでの「アクティブ運用vsパッシブ運用」論争に異をとなえつつも、

「既存のアクティブ運用ファンドの信託報酬はパッシブ運用型に比べて高すぎるので、引き下げる余地がある」

としています。本に書かれている内容はここまでです。

「ベンチマークをアウトパフォームするのは簡単」は本当だろうかと思いました。本当だったら、なぜ今までそのようなファンドを作らなかったのだろうかと思います。一方で毛流麦花が思うに、著者が主張したいことは、例えば

「パッシブ運用のファンドにおいて、構成銘柄はベンチマークとする株価指数の構成銘柄に準拠しつつも、ファンドの運用方針に沿って機械的に銘柄を外す(売却する)・追加する(購入する)ことで、ベンチマークをアウトパフォームするようなファンドは簡単に作れる。(例えば、東芝みたいに先行きに不安のある銘柄があったら、株価指数の構成銘柄の変更を待たずに、売却してしまうなど。)」

ということなのだろうと思いますけれども、その「運用方針」を投資家に開示し納得してもらうことは難しそうに思います。株価指数側でも銘柄の入れ替えは定期的に行われているわけですし、結局のところ、銘柄の入れ替えについて、株価指数側(インデックスベンダー側)、運用会社側、どちらの入れ替えを信用するのかという話と思います。

既存の株価指数(株価平均型株価指数、時価総額加重平均型株価指数など)をベンチマークとするファンドには、株式市場の果たすべき役割という観点から見て問題があること~例えばダメ銘柄を結果として買い支えてしまうことになる等々~はわかるので、そこを改善したファンド~ただし信託報酬は既存のインデックスファンド並み、もしくはそれ以下で!~というのは出てきてもおかしくないのかも、と思います。こういうファンドを、アクティブ運用のインデックスファンドと言うべきなのか、パッシブ運用のアクティブファンドと言うべきなのかはわかりませんが。

(4)インデックスファンドの構成銘柄の選別方法について
インデックスファンドというと、ベンチマークとなっている株価指数の構成銘柄をすべて買い付けているものと思われますが、必ずしもそうではありません。

例えば日経平均株価をベンチマークとするインデックスファンドであれば、構成銘柄が225銘柄と少ないので、ファンドの残高にもよりますが、全銘柄を買い付けした上でファンドを運用することが可能です。(完全法)

一方、例えばTOPIXをベンチマークとするファンドとなると、2018年4月末時点で2082銘柄もあり、大きなファンドやETFでない限り、全銘柄を買い付けることはしませんし、株価指数をトラックするだけであれば、その一部で十分です。

こうした銘柄選別の際に使われる方法のひとつに層化抽出法があり、例えば時価総額加重平均型株価指数であれば、上位銘柄を組み入れておおよその値動きをトラックし、テールリスクを排除するために、残りの銘柄を等間隔でピックアップして組み入れる、といったことが行われています。

あるいは最適化法で構成銘柄の選別が行われることもあります。最適化法では、計量モデルを用いてファンドとベンチマークとの乖離が小さくなるように組み入れ銘柄の選別およびポートフォリオの構築が行われます。

ここまでが本に記載されている内容です。(最適化法については、毛流麦花が調べて追記しています。)

インデックスファンドの構成銘柄選別方法について、完全法、層化抽出法、最適化法といった手法があることは初めて知りました。このことを知っても特別何かの役に立つとは思えないものの、純粋に面白いですね。

その他の感想
その他の感想について、記します。
・ファンドの受益者(保有者)は、ファンドの伝票類や帳簿類を運用会社に対して開示請求できるとのことです。(63頁)よりどころとなっているのは、信託法第38条「帳簿等の閲覧等の請求」なのだろうと思いますが、実際に開示請求した投資家がいるのかどうか、気になります。(毛流麦花はそこまでするつもりはありません。インデックス投資を選ぶ理由のひとつに「(個別銘柄分析等で)投資に時間を割きたくない」があるのに、運用会社に帳簿類を開示請求し、時間をかけて分析する、は明らかに矛盾しているので。)

・ファンドマネージャーは、証券会社の営業マンと電話でしか話ができないとのことです。インサイダー取引や癒着を防止するためとの由。(248頁)不正行為防止のため、そこまで徹底しているとはびっくりです。

・投資信託は積立で行うのがよいとは限らない、すなわちドルコスト平均法はけっして万能な投資方法ではないこと。(262頁)全面的に同意します。

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