『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(岩城みずほ著)を読んで

『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(岩城みずほ著)を読んだので、感想を記します。

1.きっかけ
2.外貨建て貯蓄性保険の問題点
3.最後に

1.きっかけ
岩城みずほさんがこの本を上梓されたことは、虫取り小僧さんのレビュー記事で知りました。

『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(岩城みずほ著)を読んだ感想・レビュー

虫取り小僧さんのレビュー記事を読んで即座に、この本を読むことに決めました。というのも、親が実際に契約してしまうという問題に直面したからです。親から相談された際に再三「やめときなさい」と言ったにもかかわらず、契約してしまったのです。

契約してしまって後悔したというリアルな事例が冒頭に3例書かれており、吸い込まれるように読み始めました。事例を読んでいてびっくりしたのは、「自分で運用した方がいいのでは?」と疑問を持てるほど金融リテラシーの高い人でも、販売員の説明(話術?)に負けて契約してしまっていることです。

「日本は将来的に国力が低下し円安になるので、外貨建て商品を購入するのが良い」というセールストーク(常套句)が使われているいう話が幾度か出てきますが、この話は、毛流麦花も聞きました。「円安になるの間違いなし、だったら、こんなに安全かつお得な商品ないのでは?」みたいに言われて、「為替相場と国力には関係がない、というか為替相場はそんな簡単なものではない」と親に説明したのですが、販売員の話術を覆すことはできませんでした。

2.外貨建て貯蓄性保険の問題点
外貨建て貯蓄性保険の問題点をざっくりとまとめると、以下のようになります。

まず、保険と貯蓄には、以下のような違いがあります。

保険:不測の事態(通常は嬉しくない出来事)で多額の出費を要する事態に備えるためのもの。 例えば、生命保険や自動車保険などです。ホールインワン保険のように、不測の事態には違いないものの、嬉しくないとは言えないような出来事に備える保険もありますが。

貯蓄:お金を貯めつつ増やすこと。正確には「金銭のみならず、有価証券等々価値のあるもの(=財貨)を貯めること」という意味で、貯金・預金(いずれも金銭を貯めること)と区別されます。リスクとリターンを把握し、自分のリスク許容度範囲内に抑えることが大事です。

保険と貯蓄は、このようにまったく異なるものです。異質なものといっても過言ではありません。

ところが外貨建て貯蓄性保険は、この異質な保険と貯蓄がひとまとめになってしまっており、特に貯蓄に関わる部分のリスクとリターンが見えづらくなっています。リスクとリターンが見合ったものなのかがわかりづらくなっています。

リスクとリターンを見えづらくしている仕組みには、以下のようなものがあります。

(1)外貨建てであること。
(2)市場価格調整率(MV=Market Value Adjustment)の存在。金利が上がれば債券の価格が下がるみたいに、市場金利に応じた債券の価格変動が解約返戻金に反映される仕組みです。
(3)解約控除の存在。契約後一定期間経過するまでに解約すると、積立金から控除され、解約返戻金に反映される仕組みです。

リスクとリターンがわかりづらいという問題の他にも、契約期間中にかかってくる手数料率が高いという問題もあります。例えば年間2%などです。低コストインデックスファンドの信託報酬率が0.2%とか0.1%という時代に、この手数料率はあり得ないですね。

もちろん、商品内容や手数料などについて理解・納得した上で契約するのであれば問題ありませんけれども、これだけの内容を理解できるのであれば、手数料がもっと低廉で、契約者にとって有利かつわかりやすい商品(低コストなインデックスファンドなど)についても理解できるはずであり、そちらを選択するのが賢明であることも理解できるはずです。

そう考えると、外貨建て貯蓄性保険は、「『保険なら安心』で思考停止してしまって、自分で考えようとしない人」がターゲットなのではないかと思います。自分で考えようとしないとは、リスク・リターンや商品内容の詳細にまで踏み込んで考えようとしないという意味です。

外貨建て貯蓄性保険は、毎月分配型投資信託に並ぶ、金融業界の産み出した「画期的な」商品であると言っても差し支えないのではないでしょうか。 「表面は高い利率と『保険』という看板で彩られ、その内実は……」とでも形容すればよろしいでしょうか?

3.最後に
この本は外貨建て貯蓄性保険について詳細に書かれており、読んでいて面白いものの、この本がもっとも読まれるべきである「金融商品について、それほど詳しくない人たち」が読み進むには、ちょっとハードルが高い本になってしまっているきらいがあります。

むしろ「金融商品について、よく学んでいる人(≒金融リテラシーの高い人)」がこの本を読んで、周囲にカラクリを啓蒙しつつ、注意を促していくのがいいのではないでしょうか?

この本では、外貨建て貯蓄性保険のカラクリを説明するだけではなく、「では、どうしたらいいの?」の観点から、既に契約してしまった保険の扱い、老後に向けた資産形成のあり方、さらには、iDeCoやつみたてNISA、インデックスファンドなどについても述べられています。

ここで余談、というか毛流麦花の無知をさらけ出すような話です。以下、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(岩城みずほ著)のP.74から引用します。

— 引用ここから —
また、先に述べたように、変額保険や予定利率変動型、外貨建てなどの貯蓄性保険は、標準責任準備金対象外商品です。これら商品における「責任準備金」の対象は「保障部分」だけです。つまり、運用についてのリスクを負っているのは、契約者であるということです。そういう意味では、外貨建て貯蓄性保険は、生命保険会社にとって負債が軽い商品だといえるのではないかと思います。
— 引用ここまで —

この文章を読んで「負債が軽い商品」という箇所にひっかかりました。責任準備金の話をする中で突然「負債」という言葉が出てきて、これは「負担が軽い」の誤字かなと思ったのです。

気になって保険会社の賃借対照表について調べてみたら、責任準備金は負債の項に入れられるということがわかり、無知に起因する勘違いであることがわかりました。契約者から預かったお金が負債の項に入るのは直感的にはわかりづらいですが、「保険金として、いつか返さなければならないお金 」という意味では、たしかに負債ですね。

最後に、外貨建て保険について岩城みずほさんが東洋経済オンラインに寄稿された記事があったので、リンクします。

「外貨建て保険」に潜む恐ろしい”闇”と”ワナ”

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